カジファブリック
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『ザ・ワイドショー』④マコトの場合
「ロン。タンピンイーペードラドラ。親満ね。」

またふってしまった。
おかしい。全くあがれない。
焦れば焦るほど、思考の歯車は狂い出し、すぐにふってしまう。




大介の下チャになったのが運のつきだった。
僕らはよっぽど長い時間打つとき以外、一旦席につくとほとんど席替えをしない。
仲間内だし、半荘毎に席を変えるのも面倒くさいし、一種の暗黙の了解となっている。

初めは鳴き純チャンと清一色でトップとなったが、それ以降全く鳴かせてもらえない。
堅くふらない麻雀を打つ大介は有効牌を捨ててくれない。
大介が見事な打ち回しをしていると言うべきなのかもしれない。
もはや俺が出来ることは大介のリーチ牌を鳴いて、一発を回避することくらいだ。

上がりたい気持ちと手の進まないもどかしさが焦りとなって危険牌を手出しさせる。
結果これで今日2回目のハコリ。買い溜めしたセブンスターは既に一箱空けてしまった。俺はどうしてこんなにもイライラしているのだろうか。





週明けから後期試験が始まる。来期からはゼミも始まるので、希望するゼミに入るためにレポートも書かなければならない。
本当は授業をさぼって麻雀なんてしている場合ではないのに、彼らの会話には試験の「試」文字も出てこない。
一体何を考えているのだろうか。せめてノートの写しを手に入れることくらい初めてもいい頃だ。それさえしようとしない。
きっと身近な人が手に入れるまで待っているのだろう。いつものことだ。決まって俺に泣きついてくる。もう感情のこもっていない「ありがとう」も聞き飽きた。






「カン!」

「うわっ、場荒らすなよ。」

「字牌のカンはないべ。」



こいつらは学部で何と呼ばれているのかしっているのだろうか。
大介もワタルもカズも、憐れみの目で見られていることに気付いているのだろうか。

大学で会う友人達は皆、口を揃えて「大丈夫なの?」と聞いてくる。多分、「大丈夫?」には僕も含まれているのだろう。文化人類学で一年間いつも一緒に受講していた友人にまでも心配された。俺はまだ、ただの一つも単位を落としちゃいない。
『朱に交われば赤くなる』という諺は、自分が赤くなるのではなく、他人からは赤く見えてしまうという意味なのかもしれない。




「まこっちゃんテスト大丈夫なの?国際政治学の範囲張り出されてたよ。」

慣れというのは恐いもので、もう誰に何といわれようが何も感じなくなっていた。ただ、マキにだけは心配してもらいたくなかった。いや、俺一人が心配されているならそれでもよかった。
だが、次に発せられた「あんた達は・・・」という言葉に一気に血の気が引いていくのを感じた。張り切れそうな鼓動と裏腹に、脳への血の供給がストップし視界が暗転した。
俺は、
マキにとって俺は、所詮『バカルテット』の一員にすぎないということを悟った。








「ロン!タンピンドライチ!」

「また黙かよ。うぜー。」

またふってしまった。今日はもうダメだ。久しぶりにB型がトップだったのに血液型選手権もあてにならないな。金運も恋愛運も。もちろんツモも。




入り口近くのヤニで黄ばんだ壁に掛けられた時計の針は3時15分を刺していた。
国際政治学の最後の授業が終わる頃だなとふと思い出し、未練がましい自分を嘲笑。

もういいんだ。。。

そう自分に言い聞かせ、辛口のセブンスターに火を付けた。
by live-is-my-life | 2006-02-26 01:04 | 戯言