カジファブリック
jita.exblog.jp
『ザ・ワイドショー』②ワタルの場合
「ロン。タンピンイーペードラドラ。親満ね。」

また一着だ。今日は大介に勝てるかもしれないな。
点3だから・・・2000円くらいか。デート代の足しになればまあいいか。



信州の片田舎から東京の大学に進学したのは正解だった。
地元の国立大も考えたが、一刻も早くこの面白みのない日々、環境から脱したかった。高校の友人のほとんどは地元に残ったけど、未練はない。

入学して何ヶ月はイベント系のサークルに所属していたがあまりにも自分と同じ人種が多くて嫌になった。みんな東京に憧れて入学した田舎者ばかり。田舎者が徒党を組むことほど端から見て悲しいものはないと知った。容姿、行動、話し方まで東京人に近づこうとする姿が不憫でならなかった。

夏期キャンプが白樺湖に決定し、なんで里帰りしなきゃならないんだと鼻で笑った。
キャンプを前にサークルを去った。未練はない。






「マジかよ。またハコりかよ。。。」

「ふんなやー。手よかったのにさ。みてこれ。倍満だったのに。」

「やっぱなー。怪しいと思ったんだよね。危ね危ね。」




サークルを辞めてからはバイトやら合コンやら飲み会やら麻雀やら、大学生らしい生活を送っている。
親しい仲間もできた。サークルを辞めた後というのが皮肉だが。
今麻雀をしている奴らは大学の同じ学部の奴らだ。
なんで仲良くなったのかは忘れてしまった。
たしか喫煙所で話したのがきっかけだと思うが。
奴らは集団行動が嫌いだ。所属するのも嫌い。そういうところで波長が合ったのかもしれない。

学校に行けば12、14号館前か講堂前のゲームセンターに誰かしらいる。
4人揃えば授業をさぼって麻雀。俺は別にこれでいいと思う。
これが大学生だと思っているから。
ただ俺の憧れていたものとは少し違っていたのかもしれない。
馬場の地下の雀荘は憧憬の大学生活とはほど遠いところにある。


だが、そんな湿気臭い生活も3ヶ月前から少し変わった。
彼女が出来た。OLだ。専門出て働いているから年は1つしか変わらない。
会うのは夜になることが多いけど自分自身ひとり暮らしなので別に構わない。
彼女は池袋に勤務しているから急な約束でもすぐに会いに行ける。向こうがスーツでこっちはいつもヤニ臭い服なのは少し気が引けるが。

そういえばこいつ等にはまだ話してなかったな。
別に話したくなかった訳ではない。
話す必要がなかったのだと思う。
いや、本当は気付いて欲しかったのかもしれない。
ひとり暮らしなのに、時々ラーメンを食べずに帰ることがあるのを。
仲の良い3人がいる麻雀中にメールを何回も打つのを。
テンパイしてもリーチを掛けない自分を。

今ここで言ったら、こいつらは何と言うだろうか。
「隠すなよ」って言ってくれるのか。
「知ってたよ」って言ってくれるのか。
それとも「あっそ」とそっけない態度を示すのか。





「ロン!タンピンドライチ!」

「また黙かよ。うぜー。」

「やべー。まくられる。」

「危ねー。まぁ安いからいいじゃん。」



受付に置かれたテレビでは『ザ・ワイド』が流れている。
待ち合わせまであと4時間か。
今日も誰も気付いてくれそうもないな。
[PR]
by live-is-my-life | 2006-02-20 23:44 |